風邪は治ったはずなのに、咳が続くことってありますよね。でも咳や微熱が2週間以上続く場合は、肺結核の可能性を疑ってください。
肺結核を過去の病気のように感じていませんか?小説やドラマでは不治の病という印象も強いですよね。実際、歴史上の人物でも肺結核が原因で死亡している人は多く、新撰組の沖田総司や石川啄木、ショパンなどが肺結核で亡くなっています。
確かに昔は肺結核にかかる人が多く、不治の病として恐れられていましたが、現代では治療をすればほとんど完治します。肺結核と診断されてショックを受けないように、この病気の特徴、治療、予防法の正しい知識を知っておきましょう。
過去の病気じゃない!近年増加している肺結核はどんな病気?
結核って今も発生しているの? |
日本国内では、毎年約18,000人が新たに結核を発症しています。詳細を見る |
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どのように感染・発症するの? |
咳やくしゃみなどで感染し、免疫力が弱くなったときに発症します。詳細を見る |
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もしも結核と診断されたら? |
結核は治せる病気。医師の指示に従って、きちんと薬を飲み続けることが大切です。詳細を見る |
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感染や発症を防ぐには? |
規則正しい生活と栄養バランスのよい食事で普段から免疫力を高めておきましょう。詳細を見る |
肺結核は過去の病気ではありません。昔に比べて少なくなったとはいえ、日本でも新たに肺結核を発病し、死亡する人が毎年いるのです。また、世界全体では人口の3分の1が結核に感染しており、エイズ、マラリアと併せて世界の3大感染症といわれています。
感染症が一番恐ろしいのは、気付かないうちに感染して、周りの人にうつしている可能性があることです。結核の予防と早期発見のために、肺結核とはどんな病気か、どのように感染するのかなど、肺結核について正しい知識を持つことが大切です。
肺結核が近年増加しているのはなぜ?
肺結核は、明治時代から昭和20年代にかけて、日本人の国民病と言われるほど流行しており、死亡原因の第一位を占めていました。第二次大戦後、日本でも有効な治療薬が普及し、生活水準の向上や国の結核対策によって患者数は激減しました。
しかし、近年も年間約2万人が新たに発病し、2千人が死亡しています。他の先進国に比べて数倍も多く、まだ日本では、肺結核は現在進行形の病気といえます。
さらに世界では、開発途上国での結核患者の増加が深刻化しています。結核予防会・結核研究所のホームページではその実情を下記のように説明しています。
世界では、発展途上国を中心に未だ結核が蔓延しています。人々の3人に一人が結核に感染しており、その結果毎年900万人※が新たに結核を発病し、そのうち約150万人※が死亡すると推計されています。脆弱な保健医療システム、多剤耐性結核菌の発生、HIV/エイズとの二重感染、などにより結核の問題は深刻化しています。
※WHO2013年データ
引用元:公益財団法人結核予防会・結核研究所
エイズとの二重感染は世界的に問題視されており、1984年アメリカで結核患者が急増しましたが、その30%はエイズ患者によるものだといわれています。交通手段の発達で海外からの感染者の入国を防ぐことは難しく、もともと肺結核が多い日本を含むアジア諸国では感染者が急増する危険があるのです。
肺結核とはどんな病気なのか?
肺結核は結核菌が体内に入ることで起こる感染症です。結核菌は感染した人の体内でのみ増殖し、肺以外の結核(肺外結核)もありますが、主に肺の内部で炎症を引き起こします。炎症が進むと肺が破壊され、呼吸が困難になり死に至ることもあります。
体内に入り込んだ結核菌が肺以外の臓器で増殖すること。
脳、リンパ節、気管支、骨、腎臓などがあり、日本では結核患者の約7%。
脳にできる結核性髄膜炎が最も危険で3分の1が死亡する。
結核菌は、発病した人が咳やくしゃみをする時に出る飛沫(しぶき)に含まれていて、肺結核はこの飛沫が空中を漂い、その空気を吸い込むことによってうつる病気です。しかし、空気中の結核菌は、長時間紫外線にあたると殺されてしまいます。そのため、日常的に発病者と接触している家族や友人に感染することが多いのです。
「感染」と「発病」はどう違うのか?
結核に感染しても必ず発病するわけではありません。結核菌が肺に入ると免疫が菌を取り囲んで対抗し、結核に対する抵抗力ができます。そしてほとんどの場合、結核菌は抵抗力によって抑え込まれ一生発病することはありません。このように体内に結核菌が潜伏していても、抑え込まれて活動していない状態を「感染」といいます。
結核菌は死んでいるわけではありませんので、病気や加齢で免疫力が低下すると、感染から20~30年後に結核菌が再び活動しはじめ「発病」する場合があります。「感染」の状態では、周囲の人にうつす心配はありません。また、「発病」しても「排菌」していなければ他人に感染させることもありません。
結核を発病している人が、体の外に菌を排出すること。
咳や痰と一緒に結核菌が吐き出されること。
ですから「結核かも?」と思ったら、やたらと不安に思わないで、自分が「感染」しているのか「発病」しているのか、早めに検査を受けることが大切なんです。
あなたは大丈夫?知っておきたい肺結核の初期症状と検査の重要性
では、肺結核を発病するとどのような症状があるのでしょうか?また、検査を受けるタイミングはいつでしょうか?ここでは、肺結核の初期症状の特徴と受診する病院、検査について詳しく説明していきます。
肺結核を発病した時の初期症状とは?
肺結核を発病した時の初期症状は風邪に似ています。肺炎やインフルエンザなど、他の呼吸器官の病気と違って初期症状が軽いので、なかなか自分では気づかないのが特徴です。風邪かな?と思われる症状が2週間以上続く場合は、肺結核の疑いがあります。
- 咳が長く続く
- 痰がでる
- 微熱が続く
- 体がだるい
そのまま放置しておくと、病状が進行して、血痰がでたり、喀血して呼吸困難に陥る場合もあります。肺結核はゆっくり進行するため、深刻な症状が出て診察を受けた時には、すでに重症化していることが多いのです。早期発見・早期治療が重要ですので、早めに医師の診断を受けましょう。
肺結核はどの病院で受診すればいいのか?
「肺結核かも?」と思ったら、「結核予防会」の医療施設で診察を受けることをお薦めします。結核予防会は、1939年に設立された結核対策と研究・予防を推進している公益財団法人です。結核診療において、全国的な組織を持っており、検査・入院・外来など、総合的な診療が可能です。
結核予防会の医療施設が分からなかったり、近くにない場合は、住所を管轄する保健所に問い合わせをしてください。結核診療が可能な病院を紹介してくれます。
「保健所に連絡するなんて、そんな大げさに騒いで肺結核じゃなかったら恥ずかしい!」なんて思わないでください。診察を受けて肺結核でないと判ったら安心ですから。
肺結核の感染を調べる2つの検査とは?
肺結核の検査は、感染と発病で違います。感染を調べる方法は、ツベルクリン反応検査とインターフェロンガンマ遊離試験の2つがあります。
ツベルクリン反応検査は、小学生の頃に経験した人が多いと思いますが、結核菌の成分であるツベルクリンという液を皮膚に注入して、48時間後に判定する方法です。結核菌に感染した人や、BCG接種を受けたことのある人は、皮膚が赤く腫れて反応します。
毒性の弱い結核菌を注射して、結核に対する免疫をつけるワクチン。
生後1歳になるまでに受ける、18個の針痕が残るスタンプ式の注射。
接種によって発病の危険が5分の1になり、10年~15年効果が持続する。
しかし、ツベルクリンの反応が結核感染によるものか、BCG接種によるものか判断しにくいため、近年では血液検査で結核の感染が調べられる、インターフェロンガンマ遊離試験を行うことが多くなってきています。
肺結核の発病検査と診断の経緯とは?
発病しているかどうかの判断は、胸部X線撮影検査と結核菌検査で行われます。X線撮影では、肺結核の特徴である暗い影がないか調べます。疑わしい場合はCTスキャンなどの精密検査を行います。
結核菌検査には、塗抹検査、培養検査、遺伝子検査などがあり、患者の痰を採取して排菌しているか調べます。結核菌は増殖が遅いため、数週間かかる場合もあります。これらの検査で結核菌陽性の結果が出ると「肺結核」と診断されます。
肺結核は感染する病気!医師の指示を守って治療することが大切
肺結核と診断されても、ほとんどの場合は治療をすれば完治します。しかし肺結核は、本人だけの問題ではありません。大切な家族や友人に感染している可能性があるからです。肺結核だと診断されたら、医師や保健所の指示を守って、感染を広げないようにすることが大切です。
肺結核と診断されたら周りの人はどうなる?
結核菌は増殖に時間がかかるため、周囲の人の検診が実施されるのは、感染源の患者が肺結核と診断されてから、1~2か月後に行われる場合もあります。検査の結果、感染していると診断されたら、抗結核薬による発病予防を行います。肺結核は人にうつる病気です。感染を広めないために、医師や保健所の指示を必ず守りましょう。
肺結核の入院期間はどれくらい?
肺結核は、ほとんどが薬による治療です。結核菌に薬に対する抵抗性をつくらせないため、3~4種類の薬を服用します。服用期間は基本的に6カ月ですが、症状によっては長くなることもあります。
発病していても排菌していない場合は人に感染する恐れがないので、通院治療ができますが、排菌している場合は感染症法に基づき、入院治療となります。排菌が停止して、人にうつさない状態になるまで入院が必要とされており、通常2~3カ月程度の入院となります。
通院でも入院でも、結核治療で一番大切なことは、医師から薬を服用しなくてもいいと言われるまで、指示通りに飲み続けることです。
治療が難しい薬剤耐性結核とは?
症状がなくなったからといって自己判断で薬をやめてしまうと、「薬剤耐性結核」になってしまい、治療が難しくなる可能性があります。公益財団法人結核予防会のホームページには、結核に関するQ&Aがあり、薬剤耐性結核について下記のように掲載されています。
せきが止まったからといって勝手に薬の飲み方を不規則にしたり、飲むのを止めてしまったりすると、結核菌が「耐性」を持ち、薬の効かない菌(耐性結核菌)が出来てしまいます。耐性結核は、通常の治療よりも多種の薬を、さらに長期間服用しなければならず、場合によっては、外科的に病巣を切除せざるを得ないこともあります。その分、入院期間も長くかかってしまいます。
引用元:公益財団法人結核予防会
薬剤耐性になった人から結核菌が感染すると、発病したときから薬剤耐性ですので、死亡率が高まってしまいます。医師から処方された薬を、途中でやめるのは絶対にいけません。
肺結核の感染と発病の連鎖をストップさせるには予防が一番のカギ