Eating fried cricket – eating insect concept

 虫かごを肩にかけ、網を手に駆け回った経験は誰にでもあるだろう。観察や飼育の対象だった昆虫がいま、食材として脚光を浴びている。

 今日のメニューはゴキブリの油漬け――。手塚治虫が「火の鳥 太陽編」に、肉などの食料が手に入りにくい近未来の地下都市で、昆虫が食料品として流通している場面を描いたのは1980年代後半。多くの人にとって「虫を食べる」のはSF漫画の世界のことだった。

 それから30年余り。昆虫食が注目される背景には、世界的な人口増加に伴う食糧不足への懸念がある。特にたんぱく質は、遠くない将来、供給が追いつかなくなると予測されている。

 たんぱく源の牛や豚などを育てるには大量の水や飼料が不可欠だ。たんぱく質1キロを生産するのに必要な飼料は、豚で5キロ、牛では10キロなのに対し、昆虫なら1.7キロで済む。

 限られた農地や水資源を飼料の増産にまわすと、主食となる穀物の生産が抑えられ、世界の食糧不足を招きかねない。そこで、大豆由来の代替肉とともに昆虫が「たんぱく質クライシス(危機)」を乗り越える鍵を握るとされるようになった。

 国連食糧農業機関(FAO)は2013年、昆虫食に関する報告書を発表し、「環境や健康、社会などに利点がある」と評価。市場は世界で広がりつつある。

 どんな味なのか、「ファーブル昆虫記」(奥本大三郎訳)に記述がある。バッタをバターと塩でいためると、ザリガニのような風味と焼いたカニのような匂いがして、家人に「なかなか好評であった」という。

 無印良品を展開する良品計画(東京)が5月に発売したコオロギ粉末入りのせんべいも、「エビせんべいみたいでおいしい」と、生産が追いつかないほどの売れ行きになっている。